小川未明

小川未明『野ばら』(後)

note朗読は引っ越しました「橋本美佳の朗読の部屋」

小川未明『野ばら』(後)

冬は、やはりその国にもあったのです。
寒くなると老人は、南の方を恋しがりました。
その方には、せがれや、孫が住んでいました。
「早く、暇をもっらて帰りたいものだ」
と、老人はいいました。
「あなたがお帰りになれば、知らぬ人がかわりにくるでしょう。
やはりしんせつな、やさしい人ならいいが、
敵、味方というような考えをもった人だと困ります。
どうか、もうしばらくいてください。そのうちには、春がきます」
と、青年はいいました。

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小川未明『野ばら』(前)

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小川未明 『野ばら』

大きな国と、それよりはすこし小さな国とが隣合っていました。
当座、その二つの国の間には、なにごとも起こらず平和でありました。

ここは都から遠い、国境であります。
そこには両方の国から、ただ一人ずつの兵隊が派遣されて、
国境を定めた石碑を守っていました。
大きな国の兵士は老人でありました。
そうして、小さな国の兵士は青年でありました。

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小川未明『赤いろうそくと人魚』(完)

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小川未明『赤いろうそくと人魚』(完)

ほんとうに穏やかな晩のことです。
おじいさんとおばあさんは、戸を閉めて、寝てしまいました。
真夜中ごろでありました。
トン、トン、と、だれか戸をたたくものがありました。
年寄りのものですから耳さとく、その音を聞きつけて、
だれだろうと思いました。
「どなた?」とおばあさんはいいました。
けれどもそれには答えがなく、つづけて、トン、トン、と戸をたたきました。

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小川未明『赤いろうそくと人魚』④

 

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『赤いろうそくと人魚』

あるとき、南の方の国から、香具師(やし=縁日や祭りなど人出の多いところで、見せ物などを興行する人や、品物を売る人。)が入ってきました。
なにか北の国へいって、珍しいものを探して、金をもうけようというのであります。
香具師は、どこから聞き込んできたものか、
または、いつ娘の姿を見て、ほんとうの人間ではない、
じつに世に珍しい人魚であることを見抜いたものか、
ある日のこと、こっそりと年寄り夫婦のところへやってきて、
娘にはわからないように、大金を出すから、
その人魚を売ってはくれないかと申したのであります。

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小川未明『赤いろうそくと人魚』③

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小川未明『赤いろうそくと人魚』③

娘は大きくなりましたけれど、姿が変わっているので
恥ずかしがって顔を外へ出しませんでした。
けれど、一目その娘を見た人は、
みんなびっくりするような美しい器量でありましたから、
中にはどうかしてその娘を見たいと思って、
ろうそくを買いにきたものもありました。
おじいさんや、おばあさんは、
「うちの娘は、内気で恥ずかしがりやだから、
人さまの前には出ないのです。」といっていました。

「小川未明童話集」(新潮文庫)小川未明著

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小川未明『赤いろうそくと人魚』②

 

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小川未明 『赤いろうそくと人魚』②

海岸に、小さな町がありました。
町には、いろいろな店がありましたが、お宮のある山の下に、
貧しげなろうそくをあきなっている店がありました。
その家には、年よりの夫婦が住んでいました。
おじいさんがろうそくを造って、おばあさんが店で売っていたのであります。
この町の人や、また付近の漁師がお宮へおまいりをするときに、
この店に立ち寄って、ろうそくを買って山へ上りました。

「小川未明童話集」(新潮文庫)小川未明著

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小川未明『赤いろうそくと人魚』①

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小川未明『赤いろうそくと人魚①』

人魚は、南の方の海にばかり棲んでいるのではありません。
北の海にも棲んでいたのであります。
北方の海の色は、青うございました。
あるとき、岩の上に、女の人魚があがって、
あたりの景色をながめながら休んでいました。
雲間からもれた月の光がさびしく、波の上を照らしていました。
どちらをみても限りない、ものすごい波が、うねうねと動いているのであります。
なんというさびしい景色だろうと、人魚は思いました。


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どうぞよろしくお願い致しますm(__)m

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